労働人口の減少や生産性向上の必要性、デジタル化の遅れなど、製造業を取り巻く課題は多岐にわたります。こうした課題を解決するために役立つのが、補助金や助成金です。これらを活用することで、新しい技術や設備を導入し、生産性を向上させるチャンスが広がります。
本記事では、製造業向けの補助金や助成金の基本をわかりやすく解説し、実際に活用して成功した事例も紹介します。
製造業の方でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
製造業がデジタル化を推進するうえで、補助金や助成金の活用は有効です。ここでは、補助金と助成金の違いや特徴を解説します。
それぞれ見ていきましょう。
補助金とは、国や自治体が目的を達成するため、企業や団体に提供する資金を指します。製造業では、新しい設備の導入や技術開発、デジタル化の推進といった用途で利用されることが一般的です。
また、補助金は返済不要なため、経済的な負担を減らしながら、積極的な投資を促進する支援策として有効です。
ただし、申請すれば必ず受けられるわけではなく、一定の条件や厳しい審査基準を満たす必要があります。事前に要件を確認し、適切な計画を立てることが重要です。
助成金は、人材育成や雇用促進、環境対策などの活動を支援するために提供される資金です。助成金も補助金と同様に返済不要ですが、条件を満たせば比較的簡単に受け取れるため、多くの場合、審査は厳しくありません。
助成金は日常的な運営支援に重きを置き、企業が安定して運営できるようサポートする役割を担っています。
補助金と助成金はどちらも国や自治体から提供される資金ですが、管轄や申請方法、審査基準が異なります。
以下に、補助金と助成金の違いをまとめました。
■ 補助金と助成金の違い ■
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
管轄 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
おもな用途 | 新技術・設備導入、研究開発など | 人材育成、雇用促進、環境対策など |
審査基準 | 多くの応募の中から優れた計画が選ばれる | 要件を満たすことで支給される |
申請手続き | 詳細な事業計画書や予算書の提出が必要 | 比較的簡単な申請手続き |
採択の難易度 | 高い | 低い |
支援の対象 | プロジェクト型の具体的な取り組み | 日常的な運営支援、社会的な課題対応 |
補助金と助成金の特性を理解したうえで、自社のニーズに合ったものを選択して活用することが大切です。
製造業がデジタル化を推進すべき背景はさまざまです。以下に、補助金・助成金の活用をおすすめする背景を3つあげました。
それぞれ見ていきましょう。
日本の労働人口は年々減少しており、製造業も例外ではありません。経済産業省が発表した2023年度版「ものづくり白書」によると、2023年の労働力人口は約6,700万人でしたが、少子高齢化の影響で今後も減少傾向が続くと予測されています。
このような状況では、自動化や省力化を進めることが不可欠です。補助金や助成金を活用すれば、新たな技術や設備へ投資でき、労働力不足の課題を効果的に乗り越えられます。
出展:経済産業省 2023年度 ものづくり白書
ロボットやAIの進化にともない、製造現場では高度な自動化が求められています。たとえば、AIを活用した画像認識システムを導入すれば、従来は人の目で行っていた不良品の検出を自動化でき、品質管理の精度とスピードが向上します。
また、協働ロボットを導入することで、24時間体制での生産が実現し、人手不足や労働時間の制約といった課題を解消できるでしょう。
将来的な競争力を維持するために、製造業のデジタル化が進んでいます。そのためには、ITシステムやソフトウェアの導入が不可欠です。
たとえば、IoT技術を活用したスマートファクトリーを構築すれば、機械の稼働状況をリアルタイムでモニタリングでき、異常が発生した際に迅速な対応が可能です。
また、デジタルツイン技術の導入により、製造プロセスを仮想空間でシミュレーションし、効率的な生産計画を立てられます。
製造業で使える補助金や助成金には、さまざまな種類があります。ここでは、以下の7つの補助金・助成金を紹介します。
なお、申請手順や申請条件などの詳しい情報は、各公式サイトをご確認ください。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新製品や新技術の開発、または生産プロセスを改善する際に活用できる補助金です。
具体的には、製品の高付加価値化や生産性向上を目的としたプロジェクトに対して、設備投資や試作品の開発費用などを補助します。たとえば、新しい製品ラインを導入したり、最新の製造技術を採り入れたりする費用を一部カバーします。
また、申請には事業計画書の提出が必要で、審査を通じて採択されると最大で数千万円の補助を受けられることも。詳細は「ものづくり補助金総合サイト」をご確認ください。
参考|全国中小企業団体中央会 「ものづくり補助金総合サイト」
IT導入補助金は、中小企業がITツール(ソフトウェアやサービスなど)を導入するための費用を一部補助する制度で、企業のDXを促進し、生産性向上や業務効率化を目的としています。
たとえば、会計ソフトや顧客管理システムの導入、クラウドサービスの利用、さらには製造工程の管理システムなど、幅広いITツールが対象となります。
また、IT導入補助金の応募区分は大きく分けて4つあるため、企業の規模や導入するツールの種類、目的に応じて選択可能です。
なお、IT導入補助金の申請には、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」と連携し、事業計画書を提出する必要があります。詳細は「IT導入補助金のポータルサイト」をご確認ください。
参考|中小企業基盤整備機構 「IT導入補助金ポータルサイト」
事業再構築補助金は、ポストコロナ時代における事業転換や新分野進出など、思い切った事業再構築を目指す企業を支援するための補助金です。
たとえば、製造業の企業がこれまでの事業内容を見直し、新しい製品ラインを立ち上げたり、サービス業への転換を図ったりするときに、この補助金を活用できます。具体的には、設備投資費用や広告宣伝費、ECサイト制作費などが補助対象です。
なお、申請には事業類型ごとの補助対象要件に加えて、必須要件を満たすことが求められます。詳しくは、「事業再構築補助金ホームページ」をご確認ください。
参考|中小企業基盤整備機構 「事業再構築補助金ホームページ」
省エネルギー設備導入補助金は、省エネ性能の高い設備を新たに導入したり、既存設備を更新したりする際に活用できる補助金です。エネルギーコストの削減と環境負荷の低減が目的です。
たとえば、製造業で使用するボイラーや空調設備、照明器具などを省エネ性能の高いものに置き換える場合に利用できます。
この補助金には3つの事業区分があり、それぞれ補助対象となる設備が異なるため、導入する設備の区分に従って申請しましょう。
さらに、自治体ごとに独自の省エネ補助金制度が設けられている場合もあるため、地域の制度も確認することをおすすめします。詳しくは、「省エネポータルサイト」をご確認ください。
参考|資源エネルギー庁 「省エネポータルサイト」
中小企業経営強化法に基づく支援措置は、経営力向上計画が国から認定を受けることで、さまざまな補助金や優遇措置を活用できる制度です。
経営力向上計画とは、自社の経営力を向上させるための取り組みをまとめた計画書です。たとえば、ITシステムやソフトウェアの導入、新しい技術や設備の導入、業務プロセスの改善などが含まれます。
認定を受けた企業は、以下の支援を受けられます。
詳しくは、総務省の「中小企業等経営強化法に基づく支援措置」および、「経営力向上計画策定の手引き」をご確認ください。
参考|総務省 「中小企業等経営強化法に基づく支援措置」
参考|中小企業庁 「経営力向上計画策定の手引き」
スマートものづくり応援隊は、中小企業がIoTやAIなどの先端技術を活用して、製造現場の生産性を向上させるための支援制度です。
たとえば、大分県が実施している「おおいたスマートものづくり応援隊」で提供している支援内容を、以下にまとめました。
支援内容 | 詳細 |
---|---|
技術導入支援 |
|
専門家の派遣 |
|
IoT導入計画の作成 |
|
なお、地域によって支援内容が異なるため、各自治体のホームページをご確認ください。
参考|公益財団法人大分産業創造機構 「おおいたスマートものづくり応援隊」
人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキルアップや能力開発を目的とした研修を実施する際に、費用の一部を支援する制度です。
この助成金には6つのコースがあり、企業のニーズに応じて選択できます。以下に製造業の活用に効果的な2つのコースをあげました。
それぞれのコースによって受給要件が異なるため、詳しくは厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
参考|厚生労働省 「人材開発支援助成金」
補助金や助成金を上手に活用することで、製造現場の業務改善を効率的に進められます。ここでは、実際に補助金を活用して生産性が向上した企業の事例を2つ紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
同社は、自動車部品のネジを製造する老舗メーカーです。製造DXを推進するため、IT導入補助金を活用し、IoTシステム「Nazca Neo Linka」を導入しました。これにより、工場全体の稼働状況を「見える化」し、生産効率を向上させることに成功しました。
<課題>
<成果>
なお、東京精螺工業株式会社様の事例を詳しく知りたい方は、こちらのページを参考にしてください。
また、Nazca Neo Linkaの詳細を知りたい方はこちらより資料をダウンロードしてください。
参考|東京精螺工業株式会社様「稼働状況の見える化で担当者の残業なし、出来高数%アップ!真の製造DXに向けた老舗ネジメーカーの挑戦」
参考|新明和ソフトテクノロジ「Nazca Neo Linka資料ダウンロード」
同社は、小径・難削材の精密加工を手がける町工場です。稼働監視システム「Nazca Neo Linka」とNCプログラムの送受信ソフト「NAZCA5 DNC」を導入し、稼働状況の見える化とプログラム送受信の効率化を実現しました。
<課題>
<成果>
なお、有限会社コスズ製作所様の事例の詳細を知りたい方はこちらのページをご覧ください。
また、Nazca Neo Linkaの詳細を知りたい方はこちらより資料をダウンロードしてください。
参考|有限会社コスズ製作所様「稼働監視システム導入で出来高が2ケタ単位で増加!より小径・難削材の精密加工に挑戦する町工場へ」
参考|新明和ソフトテクノロジ「Nazca Neo Linka資料ダウンロード」
製造業がデジタル化を推進するうえで、補助金や助成金の活用は重要です。これらを活用すれば、最新の技術や設備を導入でき、生産性の向上にもつながります。
今回紹介した事例や制度を参考に、自社の課題や目的に応じた最適な支援を検討してみてください。
なお、弊社のWebサイトでは、製造業の皆様のお役に立てるさまざまな資料をダウンロードいただけます。これらの資料には、製造業のデジタル化や効率化に関するノウハウが詰まっています。
ぜひこちらのページからダウンロードしてご活用ください。
参考|新明和ソフトテクノロジ 「資料ダウンロード」