図面管理システムで製造DXに挑む、
属人化からの脱却と意識改革

(左から)原田産業株式会社 製造本部・設計部 次長 関根 亨 氏、製造部・設計部 大久保 敦史 氏、新明和ソフトテクノロジ ソリューション部 山本優斗
設計図は、長年の試行錯誤が凝縮された社内の知的資産です。しかし、適切に管理されなければ、大切なノウハウは担当者の頭の中だけにとどまってしまいます。こうした属人化や紙図面の運用の脱却に取り組んでいるのが、国内屈指の選別機メーカーである原田産業株式会社(以下、「原田産業」という)です。
同社は新明和ソフトテクノロジの図面管理システム「NAZCA5 EDM(ナスカ・ファイブ・イーディエム)」を導入しました。紙図面のデジタル化を起点に、部門をまたいだ業務連携を図り、意識変革にもつなげています。
NAZCA5 EDM導入の背景からデジタル化がもたらした変化まで、製造本部・設計部の次長である関根亨さまと、システム実装を担った製造部・設計部の大久保敦史さまにお話を伺いました。
【課題】設計・製造データが散在し業務プロセスが分断、
自社一貫生産の強みが発揮できないジレンマ
国内屈指の選別機メーカー、原田産業。1957年の創業以来、大豆やコーヒーなどの穀物選別ライン、納豆の製造ラインをはじめとする食品プラントを手がけ、全国の食品メーカーを顧客に抱えています。
近年では、その高精度な選別技術を資源選別システムにも応用。建設廃材や廃家電、非鉄金属などから有価物を回収するリサイクル・環境事業も手がけています。

納豆用大豆選別機のテストライン

金属用選別のテスト機
原田産業の特長は、顧客の要望に合わせた一品一様の機械設計です。豆のサイズや処理量、設置場所のスペースに応じ、サイズや機構が異なる装置をオーダーメイドで製作。設計から試作、製造、電装までを自社一貫生産で対応しています。
グループ会社のシー・エス・ハラダがメンテナンス・アフターサービスを担うことで、顧客からの厚い信頼を得ています。
製造本部・設計部 次長 関根 亨 氏
「書棚は過去の図面でいっぱいで、物理的な保管場所が限界を迎えていました。この悩みをきっかけに、情報管理・共有の課題も解決していきたいと思っていました」と関根さま。
長年蓄積された図面の保管庫
原田産業の図面は、営業・設計・製造・シー・エス・ハラダの4部門で活用されています。各部門の用途に合わせて担当者が出図し利用しています。各部門の図面の使い方と課題は、以下のとおりです。
| 部門 | 図面の使い方 | 課題・問題点 |
| 設計部門 | CADデータをA2サイズの紙に印刷し原図として管理。責任者が回覧・検図し、承認印を押して最終図面として各部門へ出図。ISO用に別途コピーを取りファイル保存 | 二重管理の手間が発生 |
| 製造部門 | 現場担当者が原図をコピーし手元に保管。図面の余白に工程変更や調整の書き込みを入れることも | 書き込み内容が設計部門へフィードバックされない |
| 営業部門 | 受注前の提案図・概算図を頻繁に利用。都度、設計部へPDF出図を依頼 | PDFが担当者のPC上でバラバラに管理され、最終図面との乖離が発生 |
| シー・エス・ハラダ | 部品特定や仕様確認のために図面を参照。受注生産品の部品を自ら製作し、客先へ据え付け・納品 | 正確な製品情報が伝わらず、メンテナンス時に誤った部品を持ち込むリスク |
こうしてさまざまなバージョン(版)の図面が社内に散在し、正しい製作情報が不明に。業務プロセスにも分断が生じ、さまざまなロスを引き起こしていました。
図面検索のムダ
「お客様名と受注時期で紙の図面を管理していました。数千冊にのぼるファイルの中から図面を探さなければならないケースも多く、慣れていない担当者の場合、2~3時間かかることもあります。
もともと、紙の図面に加えてデータも残そうと、社内サーバー上にPDFでも保存しています。しかし、ファイルの命名を間違えたり、バージョン(版)を管理しきれなかったりと、人手による限界がありました。このような背景から『聞いたほうが早い』と、設計部への問い合わせが絶えず、設計業務が途切れる事態が続いていました」(関根さま)。
図面不整合による手戻り・製造ミス
図面のバージョン(版)や出図が管理されないことで、間違った図面が各現場にわたってしまうリスクも抱えていました。
製造中は、現場の判断で図面に調整を加えることがあります。しかし、改修内容が設計部にフィードバックされないことがありました。元の図面にはフィードバックが反映されていないため、シー・エス・ハラダ側に製品の正しい情報が伝わらず、メンテナンス時に誤った部品を持ち込んでしまうことも。
結果として、製造プロセスが属人化され、職人のノウハウに頼る部分が大きくなっていったのです。関根さまは設計部門のリーダーとして、また全社の労務管理を統括する立場として、状況の改善に動き出しました。
「リサイクルや環境などの新事業を伸ばしていくためにも、全社の業務プロセスが一体となる必要性を感じていました。そのためには、図面の一元管理が欠かせません。検図を終えた最終図面を正しい図面として設計部が管理していくことが、リードタイムを早めると考えています。そして、迅速なメンテナンス対応につながり、お客さま満足度を高めることになります」(関根さま)
【導入】図面管理システムの導入は、
社内事情を開示できる「パートナー探し」から
図面管理システムの導入検討は一筋縄ではいきませんでした。全社員が使いこなせるかという不安に加え、自社の実務と課題を深く理解し、導入後も伴走してくれるパートナー探しに時間を要したからです。関根さまはメーカー系SIerに絞って相談先を探し、展示会で出会ったのが新明和ソフトテクノロジでした。
「新明和さんといえば特装車のイメージ。特装車は圧倒的に一品一様の要素が多く、次々とグレードアップや更新が行われるので、我々の多品種小ロットなモノづくりと親和性が高いと感じました。そして、ブースに展示されていたNAZCA5 EDMは、新明和グループが自社のノウハウを活かしたシステムだと聞き、安心感を覚えたんです」と関根さま。
実際にNAZCA5 EDMのデモ画面を見ても、「パソコンを扱うのと変わらないくらい直感的に操作できました。これなら、社員のみんなも使えそうだ」という印象を抱きました。
「商談に来てくれた新明和ソフトテクノロジの山本さんから、『事前コンサルティング』の提案をもらったことが決め手になりました。『このシステムが最適解です』と自社のソリューションを押し出すのではなく、弊社の内情を理解しようとしてくれたからです。
『まずは原田産業さまの業務フローを洗い出し、必要な機能や要件を一緒に考えましょう』と言ってくださいました。その言葉に、新明和ソフトテクノロジさんならパートナーとして信頼して任せられる、と確信しました」
実際に業務フローを整理していくと、それまで社内で「仕方ない」と思われていた非効率が、「解決すべき課題」として次々と浮かび上がってきました。
その最たる例が、図面の「検図・承認」プロセスです。全国にお客様を持つ原田産業では社員の出張が多く、検図に承認印を押すためだけに帰社するケースもありました。NAZCA5 EDM上で承認フローを構築すれば、外出先からリモートで電子承認できます。
仕掛品やメンテナンス用の部品が並ぶ製図現場
ISO用の紙への印刷・PDF化という長年の二重作業も、PDFへの自動変換オプションで全廃できる道筋がつきました。事前コンサルティングを実施したおかげで、導入の決断はスムーズだったと関根さまは振り返ります。
「実際にデモ環境を動かし、現業との整合性や操作感も問題なく確認できました。そこから山本さんは導入効果を試算し、補助金も紹介してくれたんです。こうした丁寧な伴走が社内の安心感にもつながり、社内決裁もスムーズに進みました」

複雑な業務プロセスを紐解き、業務フローを整理したうえで最適なシステム構成を導き出す――。
新明和ソフトテクノロジの事前コンサルティングは、単なる図面管理のシステム化という枠を超え、原田産業のDXそのものを動かす契機となりました。
【成果】月80時間の工数削減へ、4部門に広がる図面管理の活用
NAZCA5 EDMの導入後はさっそく、過去5〜6年分にわたる紙図面をデジタル化しシステムに移行。大久保さまが中心となり、社内実装を牽引しました。意識したのは現場の使いやすさを追求することでした。
「たとえば、フォルダを再構成しました。以前は『受注番号』順だったものを『顧客名・設計内容・番号』の順に変えることで、目当ての図面を見つけやすくしました。
また、属性情報とフィルター機能を駆使し、共通部品を一括検索できるようにしています。似たような機種で同じ部品を使っているのに図面を別々に持っていると、片方しか修正されないといった問題が発生するためです」と大久保さま。
製造部・設計部 大久保 敦史 氏
日々、試行錯誤するなかで、大久保さまが使い勝手のよい機能にあげるのはフィルター機能です。担当者しか知らない図面の種類や用途などを属性情報としてカテゴライズし、タグで可視化しています。
「お客様別にフロー図だけを一括抽出したり、その機種専用の部品図を絞り込んだりと、社内の情報が活きるように、フィルター機能の使い方を自ら開拓しています」(大久保さま)。
大久保さまが日々取り組んでいるのは、設計図を起点とした「製造データの資産化」といえます。こうした細やかな構築作業により、部門ごとに散在していた図面がシステム上に集約されました。今では、最終図面とあわせて製品の取扱説明書や組立図、配線図なども格納し、必要な情報がシステム上で閲覧できています。

また、NAZCA5 EDMの活用は設計部門にとどまらず、製造、営業、シー・エス・ハラダの各部門へと着実に広がっています。
設計部門では他部門からの図面検索に関する問い合わせが減り、本来の設計業務に集中できる環境が整いつつあります。製造部門では、標準機のレーザー加工用図面をNAZCA5 EDMに格納し、リピート品の板取りなどの製作準備が効率化されました。
シー・エス・ハラダでも、NAZCA5 EDMから図面や取扱説明書を引き出し、スピーディーな修理対応にあたっています。営業部門では一部、受注前の計画図や仕様書を出先のデバイスで閲覧する運用が始まりました。
「システムに慣れるのは若手社員が早く、『この画面を見ればわかりますよ』と先輩にも伝えてくれています」と、関根さまは社内の変化にも気づいている様子です。
これまで紙ベースで分断されていた各工程がNAZCA5 EDMという1つの情報基盤でつながり、業務プロセスのロスが着実に改善されています。その削減工数は「月間で67時間~80時間に及ぶ」との試算です。
【展望】企業文化が変わるまで5年、伴走を経て理想の運用へ
とはいえ、システム運用における課題がすべて解消されたわけではありません。軽微な誤字修正の際にもシステム上の承認フローを経なければならないといった運用のジレンマなど、次なる改善点も見えています。
「システムが社内に浸透し、企業文化が変わるまでには、5年ほどの期間が必要だと考えています。100パーセント完璧なシステムも存在しません。使い込むなかで見えてきた細かな要望は都度、新明和ソフトテクノロジの山本さんにお伝えしています」と関根さま。
その言葉を受け、窓口を担った山本は、「関根次長の『会社をよりよくしたい』という強い想いを感じたからこそ、その熱意に全力で応えたいと思いました。これからも伴走します」と語ります。
原田産業における設計部発の図面管理は、散在していた会社の知財を「正しい情報」として設計部門に集約する試みです。これは、全社の情報連携を整える製造DXといえるでしょう。その根底にあるのは、「会社をよりよくしたい」という関根さまの強い想いにほかなりません。
穀物選別で培った圧倒的な精度を武器に、需要が急増するリサイクル・環境分野へ――。設計部門から始まった図面管理の取り組みは、次なるモノづくりを支える土台として根付こうとしています。