自動作図ツールで設計の負担を減らす方法とは?過去図面の再利用とメリットも解説

製造業の現場では、古いものから新しいものまで多くの図面が取り扱われています。しかし、過去の図面と類似した図面を新たに製図する場合、手間を要したり、品質にばらつきが出たりなどさまざまな問題が生じることも。
この記事では、図面の再利用に役立つ「自動作図ツール」と「図面管理システム」を解説します。また、各ツールの基本的な機能や活用メリットを詳しく説明します。
製図を効率化したいと考えている設計担当の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.過去の図面と類似した図面を製図する4つのデメリット

過去案件と類似した仕様の図面を新たに製図してしまうと、さまざまな問題が生じます。ここでは、新規図面として製図する4つのデメリットを紹介します。
- 手間がかかる
- 品質にばらつきが出る
- 図面枚数が増えファイル容量を圧迫する
- 取引先から新規案件と見なされ製造コストが上がる
それぞれ見てきましょう。
1.1 手間がかかる
新たに製図する場合、再度、図面に関わるすべての情報を準備しなければなりません。たとえば同じ部品を使用する場合でも、材料の発注先情報を確認したり、製造工程を調整したりする必要が生じます。
また、メンテナンス情報や部品改良情報も整理し直す必要があり、手間がかかる要因となるでしょう。結果として、同じ製品にもかかわらず案件ごとに対応することになり、作業効率が低下します。
1.2 品質にばらつきが出る
材料手配や製造工程が異なると、製品の品質にばらつきが出る可能性があります。たとえば、異なる組み立て順序や作業手順の違いにより、仕上がりや性能などが一定とならない可能性があり注意が必要です。
また、過去の図面を再利用せずに一から図面を引き直すと、設計者ごとに異なる解釈や方法が採り入れられることも。この場合、図面の細部や寸法に微妙な違いが生じる可能性があり、製品の一貫した品質を保つ妨げとなります。
さらに、過去の図面には長年の経験が反映されていますが、新たに図面を引く場合、ノウハウが十分に反映されません。これにより、過去に解決された問題点や改善点が再び発生し、製品の品質や性能の低下につながるリスクがあります。
1.3 図面枚数が増えファイル容量を圧迫する
新規製図を繰り返し、図面を量産してしまうと、管理する図面の枚数が増えファイル容量圧迫の原因となります。
たとえば、ファイルサーバーで図面を管理している場合、プロジェクトごとに新しい図面ファイルが追加されていくため、サーバーのディスク容量を消耗してしまうのです。結果として、サーバーのパフォーマンスが低下し、データの保存やバックアップに時間がかかります。
また、ファイル容量が増えると図面の検索や参照に時間がかかるため、図面をデジタル管理していても、その性能を十分に発揮できません。
1.4 取引先から新規案件と見なされ製造コストが上がる
以前、取引した製造物の図面にもかかわらず、新規図面として加工業者に発注した場合、過去の加工費用が踏襲されず、新規案件として扱われることがあります。
たとえば、過去に特定の部品を製造してもらった際、一定の価格で加工費用が決定されていたとします。しかし、新たに図面を引き直して再発注した場合、業者が新規案件と認識し再度見積もりする可能性も。
この場合、過去の取引履歴が活かされず、新たに設計された加工条件や材料費などを基に費用が算出されます。よって、以前よりも高い製造コストを提示される場合があり、注意が必要です。
2.過去の図面の製図に使える!自動作図ツールとは
過去に製図した図面を再利用する際に役立つツールとして、自動作図ツールがあります。ここでは、自動作図ツールの概要とメリットを詳しく解説します。
- 自動作図ツールとは
- 自動作図ツールの活用メリット
それぞれ見ていきましょう。
2.1 自動作図ツールとは
自動作図ツールは、製品ラインナップを選択したり、寸法などの仕様を入力したりするだけで、社内の設計ルールに沿った図面を自動的に作成できるツールです。具体的には、設計者が入力フォームに製品の種類や寸法、材料の種類などの情報を入力すると、それに基づいて自動的に詳細な図面が生成されます。
たとえば、オーダー品の製造で、システムキッチンの図面を作成する場合を考えてみましょう。通常であれば、設計者が設置スペースと各器具の大きさや形状を考慮し、一から手作業で図面を作成する必要があります。しかし、自動作図ツールを使用すれば、設計者が器具の種類や必要な寸法(直径、高さ、材質など)を入力するだけで正確な図面が製図されるのです。
自動作図ツールは多くの場合、CADなどのソフトウェアと連携して動作します。予め寸法、仕様などのテンプレートやルールを整備することが重要です。手作業で図面を引くミスや手間を減らせるため、作業効率向上につながります。
なお、3次元CADソフトウェア「SOLIDWORKS」を使った自動設計の具体的な手順に興味のある方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:SOLIDWORKS標準機能で自動設計する方法とは?部品モデルを使って手順を解説
2.2 自動作図ツールの活用メリット
ここでは、自動作図ツールを使う3つのメリットを紹介します。
- 製図ミスを防げる
- 設計者の技量に左右されづらい
- 取引先に正確な製品仕様を伝えられる
それぞれ見ていきましょう。
2.2.1 製図ミスを防げる
自動作図ツールを使用すると、設計者が入力した仕様に基づいて自動的に図面が作成されるため、寸法の誤記入や設計ルールの見落としを防げます。たとえば、機械部品の設計で、ボルトの位置や穴の寸法を手作業で設定する場合、ミリメートル単位での誤差が発生することも。しかし、自動作図ツールを使用すれば、入力された寸法に基づいて正確な位置にボルトや穴を配置可能です。
また、多くの企業では、製図に関するガイドラインや標準が設けられていますが、手作業で図面を引く場合、これらのルールを完全に遵守するのは困難です。たとえば、特定の部品には特定の公差や表面仕上げが必要とされる場合がありますが、手作業で正確に適用するのは難しいでしょう。
自動作図ツールの場合、設計ルールを予め設定できるため、規定が自動的に適用され、社内ルールに沿わない設計を防げます。
2.2.2 設計者の技量に左右されづらい
自動作図ツールには、社内で培われた設計ノウハウが盛り込まれています。たとえば、ベテラン設計者が長年の経験で得た最適な設計手法や、過去のプロジェクトで得られた教訓が含まれます。
そのため、誰が設計しても技量に関係なく高品質な図面を書け、一定の品質を担保できることが利点です。
2.2.3 取引先に正確な製品仕様を伝えられる
正確な図面を提供することで、取引先との認識のズレを防ぎ、誤解や再確認の手間を省けます。たとえば、特定の部品の寸法が正確であれば、その部品を使用する工程での誤差が減少し、製品全体の品質も上がるでしょう。
さらに、信頼性の高い図面は、取引先に安心感を与え、長期的なビジネス関係の構築にもつながります。
3. 過去の図面の検索に使える!図面管理システムとは
過去の図面を簡単に検索できると、設計作業が効率化されます。ここでは、図面管理システムの概要とメリットを詳しく解説します。
- 図面管理システムとは
- 図面管理システムの活用メリット
それぞれ見ていきましょう。
3.1 図面管理システムとは
図面管理システムとは、図面に持たせた属性(キーワード)情報の組み合わせにより、必要な図面を検索するシステムです。
たとえば、図面に対して製品名、部品番号、作成日時、担当者などの属性を付与し、それらの属性を基に検索します。これにより、大量の図面の中から必要な図面を迅速に見つけ出すことが可能です。
最近では、AIを活用した類似図面検索機能を搭載した図面管理システムも登場しています。これにより、より高度で正確な検索が実現し、設計業務の効率化がさらに進んでいます。
なお、製造業向けの図面管理システムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:図面検索システムの選び方とは?AI類似検索と属性情報検索の2つの方法を徹底比較
3.2 図面管理システムの活用メリット
ここでは、図面管理システムのメリットを2つ紹介します。
- 過去の図面から類似図面を探せる
- 過去の図面を資産として蓄積できる
それぞれ見てきましょう。
3.2.1 過去の図面から類似図面を探せる
新しい案件で特定の部品を設計する際、図面管理システムを活用することで、過去に同じ部品や類似の部品が設計されていないか属性情報で検索可能です。企業によって必要な属性をカスタマイズし使いやすく設定できるため、効率的な検索が実現します。
これにより、同じ仕様の図面が見つかった場合、新しい案件にもその図面を流用でき、再設計の手間を省けるのです。また、過去の図面を基に設計するので、ミスのリスクを減らせます。
3.2.2 過去の図面を資産として蓄積できる
属性情報を持たせた図面を体系的に管理することで、必要な時に迅速に取り出せるようになります。過去の設計ノウハウや成功事例を簡単に参照できるため、設計業務の効率化や品質向上につながります。
たとえば、新しい製品を設計する場合、過去の成功したプロジェクトの図面を参考にすることで、設計の精度を高められるでしょう。
また、過去の図面の蓄積により、社内で知識共有が進み、新人設計者の教育にも役立ちます。
なお、図面管理システムの導入メリットについて、さらに関心のある方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:図面管理システムとは?主な機能と導入するメリット
4.自動作図ツールと図面管理システムの連携で設計作業はどうかわる?
自動作図ツールと図面管理システムの連携により、設計作業の更なる効率化が可能です。たとえば、設計者が自動作図システム上で仕様を入力すると、図面管理システムが過去の図面データベースを検索してくれます。これにより、図面を探す手間も作成する手間も省けます。
また、類似図面が見つからなくても、自動作図ツールが新しい図面を社内の設計ルールに基づいて自動生成するため安心です。生成された新しい図面は、図面管理システムに追加でき、将来的なプロジェクトで再利用可能な資産として蓄積されるのもポイントです。
2つのシステムを組み合わせて利用することで、プロジェクトの進行スピードが向上し、コスト削減につながるでしょう。

5.まとめ:自動作図ツールと図面管理システムで設計作業を効率化させよう
この記事では、自動作図ツールと図面管理システムの概要とメリット、両システムを連携することで設計作業がどのように効率化されるのか解説しました。
これらのツールを活用することで、過去の図面を効果的に再利用でき、新規製図で生じるさまざまな問題を回避できます。
製造業の現場で設計業務の効率化を目指している方は、ぜひ自動作図ツールと図面管理システムの導入を検討してみてください。これにより、時間とコストの節約が期待でき、設計作業がよりスムーズになるでしょう。
新明和ソフトテクノロジでは、製造業が必要とする機能を厳選しコストをおさえた図面管理システム「NAZCA5 EDM(ナスカ・ファイブ・イーディエム)」を提案しています。製造業の方で、図面管理システムの導入を検討している方は、ぜひこちらよりお問い合わせください。
関連記事:図面管理システムに関する資料ダウンロードはこちら